青春Hセカンドシーズン 第5作
花つみ
アサガオは能う限りその美しさを保つため、同じ蔓に咲く花を摘むことがある。
その行為は本能的なものであり、
そこに悪意は存在しない。
竹浪の脚本には色艶がある。それは生きる女と男のエネルギーであり哀しみでもある。そんな脚本から人の孤独と恋愛を浮き立たせたいと思った。この場合の孤独とは自己と世界の距離感のことで、恋愛とは心に少しある空きのことだ。
サトウトシキ
(c)2011 アートポート
新鋭・竹浪春花が描(か)き、鬼才・サトウトシキが描(えが)く、
美しく存在するものだけに訪れる哀しみ、そして定め。
少女の歪んだ願望が狂気の結末へと導く青春Hシリーズ・ファーストシーズン第6作目『イチジクコバチ』の監督・サトウトシキと彗星の如く現れた若干21歳の女流脚本家・竹浪春花が再びコンビを組み、やはり歪んだ願望を持つ女性の微妙な心境の遷り変わりと、その変化がもたらすあらゆるバランスのズレが生じさせる人間の狂気と、その狂気に引きずられたかの如くやってくる絶望を、霧に包まれた過去を引きずる2人の男女を軸に描いたミステリアス・ドラマ。 ヒロイン・あさこを演じるは日本映画学校俳優科卒業制作『地獄の猫』に続きサトウ監督作品の出演となる和田みさが、相手役の健太には意外にもサトウ監督作品初主演という吉岡睦雄がそれぞれ熱演している。
なぜ彼女は大人になることを辞めたのか?
なぜ彼は後ろを振り向くのを辞めたのか?
工場勤めの田宮健太は妻の死を境に記憶が1日しか保てなくなっていた。従業員仲間からは健太が妻を殺害したのではないかという不穏な噂が囁かれていた。そんな健太を気にかけていた同僚のあさこも同様にある暗い過去を引きずっており、誰かに殺して欲しいという他殺願望を抱いていた。あさこはいつしか健太の部屋へ押しかけるようになる。しかし、彼女も健太への疑念がないわけではない。むしろ、彼女が過去に負った心の傷を癒すために自分を殺してくれるのではないかと思うほどであった。その思いが吐き出されたとき、健太の封印されてきた記憶が解き放たれ、新たなる悲劇の扉が開かれようとする。
【監督】
サトウトシキ
1961年福島県生まれ。日活芸術学院卒業後にフリーの助監督としてピンク映画に参加。89年に『獣 けだもの』<原題『夢の女』>で監督デビュー。この作品で脚本を担当した小林政広(当時は小林宏一名義)とは以後多くの作品でコンビを組む。94年にアテネフランセで特集上映が組まれたり、『痴漢電車人妻篇 奥様は痴女』<一般館上映タイトル『タンデム』>(94)が95年のロッテルダム映画祭にて上映されるなど、国内外の批評家、観客から熱い視線を浴びて佐藤寿保、瀬々敬久、佐野和宏と共に「ピンク四天王」と呼ばれるようになる。その後も『LUNATIC』(96)、『アタシはジュース』(96)、『PERFECT BLUE 夢なら醒めて…』といったピンク映画の枠を超えて一般映画を発表しながら、『悶絶本番 ぶちこむ』<原題『Like a Rolling Stone』>(95)、『不倫日記 濡れたままもう一度』(96)でピンク映画大賞2年連続ベストワンを獲得し、『団地妻 不倫でラブラブ』(2000)で初代「P-1グランプリ」のチャンピオンに輝くなど、ピンク映画でも数々の栄冠を手にする。05年には留学生の入部をきっかけに再興する広島大相撲部の実話を描いた『ちゃんこ』を監督。また、『ジャイブ 海風に吹かれて』(09)はモントリオール世界映画祭の招待作品に選出される。11年には脚本家に新鋭の竹浪春花を迎えた青春Hシリーズ第7弾『イチジクコバチ』を発表するなどし、幅広い映画ファンから注目を集めている。
【脚本】
竹浪春花
【キャスト】
和田みさ 吉岡睦雄 小島彩乃 大城義弘 ほたる 伊藤猛
【スタッフ】
製作:松下順一/企画:高崎正年/プロデューサー:小貫英樹 奥野邦洋/アシスタントプロデューサー:松下達郎/音楽:金山健太郎/撮影:道川昭如/録音:荒井保/助監督:苗代祐史/編集:蛭田智子/スチール:内藤基裕/制作プロダクション:東京レイダース/製作:アートポート
2011年/日本/カラー/90分/ステレオ/ビスタサイズ/HDV(一部劇場を除く)
配給・宣伝:アートポート (c) 2011 アートポート